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名古屋高等裁判所金沢支部 平成6年(行コ)1号 判決

富山市東町二丁目二番一号

控訴人

山崎與七

右訴訟代理人弁護士

竹下重人

浦崎威

富山市丸の内一丁目五番一三号

被控訴人

富山税務署長 野村繁

右指定代理人

玉越義雄

松井運仁

北村政保

木下良

坂本重一

按田隆重

上野芳裕

志賀浦実

主文

一  本件控訴をいずれも棄却する。

二  控訴費用は控訴人の負担とする。

事実及び理由

第一当事者の求めた裁判

一  控訴人

1  原判決を取り消す。

2  被控訴人が昭和六三年八月五日付けでなした控訴人の昭和六一年分及び昭和六二年分所得税についての各更正をいずれも取り消す。

3  被控訴人が平成三年二月二八日付けでなした控訴人の昭和六二年分所得税の再更正及び過少申告加算税賦課決定をいずれも取り消す。

4  訴訟費用は、第一、二審とも被控訴人の負担とする。

二  被控訴人

主文同旨

第二事案の概要

事案の概要は、次に付加・訂正する他、原判決の事実及び理由「第二 事案の概要」(原判決二枚目裏初行冒頭以下同九枚目表一〇行目末尾まで)記載と同一であるから、これを引用する。

一  原判決三枚目表六行目に「設定」とあるのを「開設」と、同七枚目表初行「新川水橋信用金庫」とあるのを「訴外水橋信用金庫(平成二年四月一日合併により新川水橋信用金庫と商号変更、以下「新川水橋信用金庫」という。)と、同六行目「一二〇番地二〇七」とあるのを「一二〇番二〇七」と、同九行目「東京火災海上」とあるのを「東京海上火災」と各改める。

二  原判決九枚目表一〇行目末尾に行を改め、次のとおり付加する。

「5 必要経費の控除(予備的主張)

(一)  控訴人の主張

(1) 控訴人と堀田らとの間に、昭和六〇年夏ころ、事業目的は株式の売買による利得、出資は控訴人が八〇〇〇万円、堀田らが六〇〇〇万円(堀田ら三名の出資は均一)、営業者は控訴人、株式売買による利益、損失とも出資の割合に応じて各自が享受し、又は負担するとの内容の匿名組合契約が成立した。

(2) したがって、被控訴人の認定した控訴人の昭和六一年分の雑所得の金額六五一一万一六九一円及び昭和六二年分の同金額一億五一〇二万五一八三円のそれぞれ一四分の六の割合による金額は、匿名組合契約による利益配分金として、右契約上の営業者である控訴人の雑所得金額の計算上、必要経費の額に算入されるべきである。

(3) そうすると、本件各処分は、昭和六一年分の総所得金額三九七一万九九八一円を超える部分を、昭和六二年分の総所得金額八九六六万〇八三〇円を超える部分につき、それぞれ取消しを免れ得ない。

(二)  被控訴人の主張

控訴人主張の匿名組合契約が成立したことは否認する。匿名組合であれば、本件株式取引について利益又は損失の額を計算し、組合員への分配金額を算定するのが当然であるのに、控訴人は何ら右計算をしておらず、組合員への利益分配を全く考慮していないことからして、控訴人と堀田らとの間に匿名組合契約が成立していたとは認められない。」

第三当裁判所の判断

一  当裁判所も控訴人の本訴請求中、被控訴人が昭和六三年八月五日付でなした控訴人の昭和六二年分所得税についての更正処分の取消しを求める訴えは不適法であり、その余の請求はいずれも理由がないと判断するものであって、その理由は、次に付加・訂正する他、原判決の事実及び理由「第三争点に対する判断」(原判決九枚目表末行冒頭以下同二〇枚目裏六行目末尾まで)記載と同一であるから、これを引用する。

1  原判決一三枚目裏一〇行目「次に」とあるのを「更に」と、同末行「貸し付けた旨の供述」とあるのを「貸し付けた旨の前記控訴人及び久美子の前記原審供述」と各改める。

2  原判決一四枚目表四行目の末尾に次のとおり付加する。

「この点につき控訴人は、仮に一五〇〇万円の借入れが認められないとしても、夕美子はこのころ一三五〇万円を新川水橋信用金庫から借入れ、これを控訴人に貸し渡した旨主張する。そうして、証拠(乙三)によれば、同信用金庫からは、昭和六〇年六月二四日付で夕美子に対して、堀田ら及びその家族名義の二四口の定期預金を担保に、手形貸付の方法により一三五〇万円の貸付けがなされ、この貸付金が同信用金庫の控訴人名義の普通預金口座及び富山綜合ビルの当座預金口座を経て、勧角証券に支払われている事実が認められる。しかしながら、次に認定する当時の夕美子名義の借入れに対する控訴人の対応に鑑みれば、この点の控訴人の主張も採用することはできない。」

3  原判決一四枚目表五行目「なお、」とある次に「右(7)の事実及び」を付加し、同行目「本件株式」以下同七行目「認められるが、」までを「新川水橋信用金庫から本件株式取引のために必要な短期資金の借入れが夕美子名義で行われていることが認められるが、」と改める。

4  原判決一五枚目裏四行目及び同一六枚目表初行に各「一二〇番地二〇七の土地」とあるのを、いずれも一二〇番二〇七の土地」と、同一五枚目裏六行目「東京火災海上保険」とあるのを、「東京海上火災保険」と、同行から七行目にかけて「株券」とあるのを「株式」と各改める。

5  原判決一七枚目表九行目「証拠」以下同一〇行目末尾までを、「証拠(乙八、九の1ないし6、一〇ないし二五四)によれば、本件株式取引の回数、株数、内容及び損益の状況は、別表四ないし六並びに原判決添付別表二及び三のとおりであると認められる。」と改める。

6  原判決一九枚目裏四行目から五行目にかけての「一八万三〇〇〇円」の次に「(税引後の金額一四万六四〇〇円)」を、同六行目「七五〇〇円」の次に「(税引後の金額六〇〇〇円)」を各付加し、同七行目「別表二」とあるのを「原判決添付別表三」と改める。

7  原判決二〇枚目表四行目末尾に行を改めて、次のとおり付加し、同五行目「五」とあるのを「六」と改める。

「五 争点5について

前記説示(原判示)のとおり、堀田らが控訴人の株式取引に出資した事実及び堀田らと控訴人との間で利益金の分配をした事実がいずれも認められない。かえって、本件処分の調査時において、控訴人自身が、調査担当者に対して控訴人と堀田らとの間に組合契約が成立したことを否定している事実が認められる(乙二八四)。他に控訴人の主張を認めるに足りる証拠はない。

そうすると、控訴人と堀田らとの間に控訴人主張の匿名組合契約が成立していたとは認められないから、控訴人の昭和六一年分及び同六二年分の各雑所得額のそれぞれ一四分の六の割合による金額は、匿名組合契約による利益分配金として、右契約上の営業者である控訴人の雑所得金額の計算上、必要経費の額に算入されるべきであるとの控訴人の主張は、その余の点について判断するまでもなく、この点において失当であり、採用することができない。」

8  原判決二〇枚目表九行目「必要経費の額については、」の次に「匿名組合契約の成立を前提とする控訴人の必要経費控除の主張が理由のないことは、争点5で判断したとおりであり、その他には」を付加する。

二  よって、原判決は相当であり、控訴人の本件控訴はいずれも理由がないからこれを棄却することとして、主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 笹本淳子 裁判官 宮城雅之 裁判官 田中敦)

別表四 株式売買回数及び株数一覧表

別表五 銘柄別株式売買回数及び株数一覧表(昭和61年分)

別表六 銘柄別株式売買回数及び株数一覧表(昭和62年分)

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